訃報:野坂昭如
有名人の訃報ねたで色々書くのはあまり良くなかったかもしれないなどと
前回書いたのだが、先週水木しげるで今週野坂昭如、という事になると
ああ戦争体験世代で戦争関係の著作も多い人がまた…という感慨もあるので
今回は例外…というのが二週続いてしまってあまり説得力は無いかもしれ
ないが書かせて頂こうと思う。
TVで野坂昭如の訃報を報じる時、ほぼ必ずと言っていいほど、よくアニメー
ション映画「火垂るの墓」が流されるのだけれど、これはこれでしょうがない
とは思うのだが、「火垂るの墓」は、これ以外でも実写の映画とかドラマ、
漫画になっていたりするのである。
そこで私が最初に思い出したのが滝田ゆう版の「火垂るの墓」であった。
これは1980年に「怨歌劇場」というタイトルで、野坂の小説を何本か
短編漫画にして纏めた短編集の一遍であるが、私はその7年後くらいに
滝田が日本漫画家協会賞大賞受賞を受賞し、少し話題になったので
滝田の作品を色々読んでみて、その際に読んだのだがえらく感動したのを
覚えている。
原作はそれより数年前の大学の時に読んでいたのだが、とにかく陰惨な話で
何とも言えない、というのが当時の感想であった。
またその他、それより更に10年以上前の子供の頃、吉森みき男(当時は「吉森
みきお」)がタイトル「ほたるの墓」として漫画化しており、私はこれを読んでいた。
これは1969年の「りぼん」誌の付録漫画になっていたのをリアルタイムで
読んでいたのだが、男性の私がなぜこれを読んでいたかというと、2つ上の
姉が居て、「りぼん」誌など少女漫画雑誌を買っていて、私も読む事が
出来たからである。
吉森みきお版の「火垂るの墓」の、原作との大きな違いは、
1)
主人公の清太が生きていて、戦後、教師として生徒たちに自分の戦争体験を
語る、という形式になっていた事。
2)
また、清太の妹の節子の亡くなるシーンが、清太の目の前で「おいしいよ」
と言って泥団子を食べて、それで(喉につまらせて?)亡くなる、という
風になっていた事。
の、2点であったと記憶している。(記憶違いがあったらご容赦下さい。残念
ながらこの本、姉ももう捨ててしまったようで確認できません。現在、「焼け跡
のうた」という短編漫画集に再録されているようですがこちらも未確認です。)
当時小三か四だった私は、これを読んで、「今だったら泥を吐かせるとか救急
措置で救えたんだろうな〜」とか、「戦争が無くても貧困だっだらこういう事に
なるんだろうな〜」とか、我ながら生意気で嫌なガキというか…ひねくれた
感想を持って、あまり好きになれなかったものだ。
吉森みきおの、庶民的で、あまり裕福ぽくない感じのしたキャラの画風もこう
いう感想を持つのに一役買ったのかも知れない。
今にして思えば、吉森みきおの画風はそれだけこの作品にピッタリの、リアリ
ティのあるものだった、という事なのかもしれない。とにかく、強く印象に
残った作品ではあった。
ネットを検索してみると、この吉森みきお版「ほたるの墓」について書かれて
いる個人のブログも幾つかあったのだが、「火垂るの墓」のwikipediaには載って
いない。まあ、wikipediaはwikipediaのIDを所有している不特定な多くの個人が
趣味で書いているようなものなので不完全でもしょうがないのだが、この
吉森みきお版は初めてマンガ化されたもののようでもあるので載っていても
良いと思うのだが…。
さて、滝田ゆう版に話は戻るが、これは吉森みきお版より更にページ数の
短いもので、原作ほぼそのまま(但し、省略は多い)というのものだったと記憶
している。(残念ながら、この作品の掲載された「怨歌劇場」も、私の物品の
整理が悪くて手元になく、正確な内容の確認が不能で、記憶違いもあるかも
しれません。)
滝田ゆう版には非常に感動した覚えがあるのだが、その理由ははっきりとは
覚えていない。恐らく、その「画」にあったのだと思う。
これは全体的な話であるが、滝田ゆうの作品の非常な魅力はやはりその「画」
であったと思う。
そのキャラクターデザインなど、写実画とは全く無縁のものであるのに逆に
感情移入できる、人間の深い悲哀、哀愁、陰影が表現されているものだと
感じたのだ(この辺、私の趣味が入りすぎかもしれません。)。
そういう意味で、浪漫的であったと言えるかもしれない。
滝田ゆうは1990年に58で亡くなっているので早世と言えるが、1960年代後半
から後、主に大人の間が中心とはいえ人気を博し、ご本人も結構TVに出演されて
いるし、一部とはいえ作品がアニメ化もされているし(確か彼のキャラクター
デザインのCMもあったと記憶している)亡くなる3年前には日本漫画家協会賞
大賞を受賞しているし、現在でも公式サイトもあるし、何度も作品が文庫として
再販されていて多くのファンから愛されているようで、作家(漫画家)としては幸福と言えるかも知れない。
滝田ゆうの公式サイト↓
http://www.d2.dion.ne.jp/~tsukakun/dozeuan.htm
で、また吉森みき男に話は戻るが、ネットで調べても、1997年位が最後の作品に
なっていてその後が良く分からない。現在73歳位になっている筈なので
現役を引退していても不思議ではないか、と余計な心配をしてしまう…。
まあ、ネットで検索すると熱心なファンの方のブログ文も幾つか見つかるが。
(最近まで公式webサイトもあったようですが、現在見つかりません。)
…と、野坂昭如の訃報ねたで滝田ゆうと吉森みき男の話ばっかりであったが、
連想ゲームのように記憶が広がってしまったのであった。
- 2015.12.12 Saturday
- コミック(漫画・劇画)
- 22:29
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- by コウ中村