海外TVドラマ 「刑事フォイル」(3)

先日、久々に近場のレンタルDVD屋に行って色々見ていたら、「刑事フォ
イル」も、レンタル品として入っていた。これで、見逃した回、録画に失敗
した回も割と楽に借りて見る事が出来るようになった。(もちろん、レンタル
ではなく購入しておくのが一番良いと言える。)

 

…という訳で、久々にTVドラマ「刑事フォイル」の、ある回について書か
せて頂きたい。

 

今回は前回より若干戻ってシーズン2の、通算6話目「エースパイロット」に
ついて(ネタバレあり)。

 

この回はタイトル通り、フォイルの息子の英空軍での活躍が事件に関係する
ため、推理、サスペンスと英空軍航空機(スピットファイア)が絡むという、
TVドラマとしては非常に珍しい作品となっている。

 

この回も複数の犯罪がほぼ同時に進行し、それらが一見別々の事件のように
見えるが複雑に絡み合っており、脚本が非常に上手くできているのが分かる。
また、この回の事件とフォイルの息子の動向はその後の回にも影響を与えて
いる。

 

また、この回では、フォイルはこの回の非常に重要な事件の容疑者を最後に
追い詰めるが、逮捕しないまま終わる、という大変に特殊な終わり方をする。

 

その容疑者はフォイルの息子の同僚で親友のエースパイロット・レックスで、
亡くなったのは彼の婚約者であるが、彼は婚約者が彼ともめている最中に
ちょっとした拍子にバランスを崩して階段を転げ落ちて死亡した、という
のだ。
しかしそうだとしても死体遺棄、捜査妨害等の容疑は残る。だがフォイルは
逮捕しなかった。

 

その理由にはその際に彼に出撃命令が下った事もあるが、彼が婚約者と喧嘩を
した原因に戸惑った、という事もあるだろう。

 

彼が婚約者と喧嘩になった原因は、彼は実は同性愛者で、フォイルの息子を
一方的に秘かに想っていたのだが、それが婚約者に知られてしまった事だと
言うのだ。

 

これがこの回の最大のポイントであろう。
当時のイギリスでは同性愛は全く理解されていなかった。というか、実際に
肉体関係を持ったりしたら犯罪…それも戦後の結構な時期までそうだった…
という事は、近年日本でも公開されて話題になった「イミテーション・
ゲーム」などでも描かれて知られるようになっている。

 

同性愛と言ってもレックスの場合、フォイルの息子に対して全く一方的な
片想いをしているだけなので犯罪にはならないであろうが、それが知られた
だけで空軍を追われ、親友であったフォイルの息子とも絶縁されるであろう。
なのでレックスにとってはこれは絶対的な秘密であった訳だ。

 

フォイルはレックスが出撃してゆくのを黙って見ているしかなかった。
しかし、彼はその出撃から帰る事は無かった。
その後、フォイルの息子がフォイルにレックスの最後の空戦の様子を語るが、
そこでは彼がまるで死を望んでいたかのような戦いぶりだった事が語られる
のだ。

 

戦争もの、それも空軍や航空機が絡んだフィクション作品で、同性愛が内容に
絡んでいるものは極めて珍しいであろう(前述の「イミテーション・ゲーム」
は実話が同性愛に関係しているのでまた別だ。)。

 

最近は日本でもLGBTという言葉が広く知られ、一部の地方自治体で同性
カップルの結婚が認められるようにもなってきたが、まだまだ差別され、
偏見の目で見られる事は多いような気もしている。

 

そういう自分も、25年以上前の学生の頃の事だが、友人の男性に少々女性っ
ぽい感じの人間がおり、「おカマXX」などと仇名をつけてからかっていた
事があった。まあ彼が別に同性愛者ではない事が分かっていたからだったの
だが、考えてみると「女性っぽい男性(今の俗語で言う『おネエ』)」=
「同性愛者」というのもしょうもない偏見であった訳だ。
(ちなみに彼はその10数年後くらいに女性と結婚されてお子さんも授かった
そうな。)

 

こういう事はこのブログで扱うには少々難しい事であるが、知らず知らず
差別する側に回っている事のないよう気を付けたいと思うのである。

 

…と、少々脱線してしまったが、このように「刑事フォイル」は、現在にも
通じる社会的な問題についても想起させる、非常に優秀な作品なのである。

 

(おまけ:映画「イミテーション・ゲーム」も、私が近年見た戦争関係の
映画の中で最も面白く、感動的だったと言えるほどのものだったのでそのうち
書いてみたいと思っている。)

 

(続く)

 

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    海外TVドラマ 「刑事フォイル」(2)

    さて刑事フォイルの(2)なのだが、いきなり第3シーズンの#9について書かせて
    頂きたい(ややネタバレあり)。

     

    なんでいきなり第3シーズンに飛んだかというと、以前AXNミステリーで放映
    されていた頃、HDDがイッパイイッパイの上、他に録画したいものも結構
    放映されていたので、殆ど録画してはすぐ消す、という事をやっていたので
    ある。なのでこれから紹介する回はその中で残った貴重な回だ。

     

    なお、第3シーズンの#9といっても第3シーズンで9話もあった訳ではなく、
    通しの話数で、第1シーズン、第2シーズンでそれぞれ4話ずつある。
    なので第3シーズンとしては最初の回である。

     

    このドラマ、日本語タイトルは「刑事フォイル」であるが、原題は
    「Foyle's War」、直訳すると「フォイルの戦争」なのである。
    刑事かどうかより、「フォイル」という人間の戦争体験、個人の戦い、が
    主題なのだ。

     

    フォイルは第1シーズンの初回の冒頭で、上司であるサマーズ警視監に海軍
    諜報部への転属を願い出ている。戦争が始まったので、警察業務よりも
    直接、敵と戦える役職を希望したのだ。結局断られるが、フォイルはずっと
    この思いを持ち続けてゆくのだが、これが第9話の伏線にもなっている。

     

    第1話でのキャラクターの内面が、数年も経って作られた第9話に生かされて
    いる。この辺の一貫性も良い。

     

    フォイルが移籍したがった英国軍部関係であるが、内部は単純でなく、
    この回でピックアップされる組織はSOE(特殊作戦執行部)であるが、
    MI6(英国秘密諜報部)から睨まれており、そのMI6のスパイに潜入されて
    しまっている。ナチスドイツに勝利するため、という大義の元、味方同士でも
    戦っている状態になっているのだ。

     

    この回はこういう背景の上、フォイルの部下であるサマンサとミルナーの
    行動や思いも複雑に絡んでくる。また、この回はその後の回でのフォイルの
    辿る行動 -結局、警察を辞めて諜報部に入る- に、大きく関係してくる
    重要な回である。

     

    なので今回も、いや、他の回に比べても特に非常に地味な回であるとも言える。
    せいぜい、少し変わった所で、フォイルがSOEの訓練所に入る際、止まって
    いるハンバーFWDトラックが少し見えるくらい。

     

    複雑で、きちんと見る、内容を読むのが難しい、とも言える回であるが、とに
    かくこの回は非常に重要な回で、見逃せない回なのだ。

     

    (続く)

     

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      海外TVドラマ 「刑事フォイル」(1)

      ここの所、模型製作記事ばっかりだったので、久々に映像関係の紹介記事を
      書いてみよう。

       

      それは海外TVドラマの「刑事フォイル」である。
      これがもうすぐ放映開始、という訳ではないのにこれを選んだ理由であるが、
      来月に正式なDVD-BOX(日本語字幕付き、一部日本語放映版も)が発売される
      からである。

       

      このTVシリーズは非常に長いものなので、全部を紹介するのは非常に大変で
      ある。また、とりあえず英国で放映されたオリジナル版の日本語字幕版は
      衛星放送のAXNミステリーチャンネルで放映済みの為、wikipediaを始めとする
      まとめサイト等で全話に渡って概要は紹介されている。
      とりあえずそれらは下記などである。
      wikipedia(日本語)↓
      https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%88%91%E4%BA%8B%E3%83%95%E3%82%A9%E3%82%A4%E3%83%AB
      全話の紹介、あらすじ(日本語)↓
      http://koretame88.com/foyle/
      AXNミステリーの公式ページ(今月は第9シーズンから3話分再放映予定)(7月16日に訂正:今月8日から第1シーズン第1話から4話分再放映予定) (日本語) ↓
      http://mystery.co.jp/programs/foyle
      英国の番組公式サイト(英語)↓
      http://www.itv.com/hub/foyles-war/2a1515a0006

       

      で、それらと同じことをやっても意味はないので、当ブログらしい切り口
      で、これぞと思える回をピックアップして紹介したいと思うのだ。

       

      まずこのシリーズ全体の「浪漫world的視点による魅力」。
      1)舞台、時代背景が第二次世界大戦頃の英国、ヨーロッパである。
      2)主人公の息子が英国空軍のパイロットである。
      3)英国は戦勝国であるが、その内部は単純ではない。英国や連合国の政策を
      批判しているような部分もある。
      4)主人公のフォイルは正義感も人情味もある刑事で、日本のTVドラマで
      言うと「はぐれ刑事純情派」の安浦吉之助。理知的で場合によっては反体制側
      にもなる所は「相棒」の杉下右京、といった所。
      (テーマ曲が哀愁をおびていて、これも「はぐれ刑事純情派」っぽい。)
      5)1話が基本的に2時間枠の中で1話完結であるので劇場用映画っぽい感じも
      するが、撮り方は人物のバストショットやUPが多く、戦争が背景にあっても
      派手なアクションが売りではないので、良い意味でTVドラマ的で、観易い。

       

      まずはシーズン1の第1話「ドイツ人の女(原題The German Woman)」である。
      タイトルから大体連想できるが、大戦前、大戦中の英国にもドイツ人、
      あるいはドイツに関係の深いイギリス人はいた。
      彼ら、彼女らが当時英国でどのような扱いを受けたか、は大体想像できるが、
      同じ英国在住ドイツでも、人それぞれの置かれた立場によって待遇が全然
      違ったりしたのだ。
      その辺が作品のストーリーの背景、伏線となっており、この描き方がまた
      渋くて良いのだ。

       

      配役も良い。1話はフォイルの上司としてエドワード・フォックスが出演して
      いるが、彼は映画「空軍大戦略」にも英国空軍軍人役で出演しているので、
      何となく不思議なデジャブ-感が味わえる。もちろん、出演時の年齢は違うし
      今回は警視監役だが、英国空軍制服ぽいのである。

       

      また、フォイルの運転手として配備される若い女性(ハニーサックル・ウィー
      クス)は、美女というより「キュートな女性」的なキャラクターで、これが
      また何となく「空軍大戦略」で空軍婦人部隊分隊長を演じたスザンナ・
      ヨークを彷彿とさせるのだ。

       

      なお1話は田舎の酒場が迷ったドイツ空軍機の爆撃(狙い撃ちではなく、余った
      爆弾を帰還前に捨てる、といった感じ)を受けるシーンがあるが、このシーンで
      飛行機が映っているカットは1カットだけだが、これがどうもB-25っぽい。
      しかし、ちゃんとドイツ空軍機っぽい塗装になっており、恐らくドルニエ
      Do17のつもりと思われる。
      CGとか模型を使っても良いのにたった1カットの為にイギリスに残っている
      B-25を使う所がまた、何とも良い感じである。

       

      派手な戦闘シーンは無いが、そこは英国、今でもたくさん残っているクラ
      シックな車両が沢山登場するのも魅力だ。

       

      英国と言えば最近、EU離脱が国民投票で可決され話題となったが、刑事
      フォイルやこれを作ったスタッフ達ならきっとEU残留を選んだであろう…

      そんな事を思わせるのだ。この作品は。

       

      (続く)

       

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