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海外TVドラマ 「刑事フォイル」(4)

今回は時期的にそろそろ『浪漫工房』で作っているガレージキットの原型の
進捗状況とか上げたい所ですが、相変わらず予定より遅れっぱなしで、
とても公開できる状況とは言い難いので、別の話にさせて頂きます。

 

…という事で、久々に海外海外TVドラマ『刑事フォイル』の話です。
ちょうどNHKBSプレミアムで、4月6日から週1回、今回はオリジナルと同じ
1回につき約1時間半の枠を取って、オリジナルでのシーズン6から放映が
始まりました。

 

これを書いている時点で、13日放映の『差別の構図』が最新放映話です
ので、この回について書かせて頂こうと思います。(若干ネタバレあり)

 

なお、NHKBSではこの回は第40回になっていますが、これは今までの放映で
約1時間枠でオリジナルの回が2回に分けられて放映されたため、通算放映
回数が増えてしまった為の番号と思われます。オリジナルの通算では
21話になっています。

 

この回ではすでにヨーロッパの戦争は終結した1945年7月が舞台の時代に
なっており、フォイルとしてもそろそろ刑事は退職したい考えを持って
いるもののすぐに辞める訳にも行かず続けている、という設定になって
います。また戦時中にフォイルの運転手だったサムは退職し、恋仲だった
フォイルの息子とも別れて別の恋人、アダムとやや古風になった建物で
下宿屋を営んでおり、時々フォイルに協力している、という設定に
なっています。

 

この下宿屋で下宿している客人に今回のエピソードの主役級の被害者の
女性とその事件の関係者が配置されていますが、彼らの存在とその
絡ませ方に説得力があり、ご都合主義的な感じは全くありません。

 

まず主役級の女性と言うのはマンディという名前で、元々トミーという
有名ボクサーを恋人にしていたのだけれど、彼は兵役拒否をした為に
スコットランドに土木作業(恐らく銃後の戦争協力作業)をを行いに
出されて、彼女と長く離れ離れになっていた、という設定がある。

 

この間にマンディは気持ちが離れ(彼が兵営拒否した事も気持ちが離れた
原因の一つかも知れないが、その辺ははっきりとは描いていない)、英国
本土に駐留していた米軍の黒人兵士のゲイブと恋仲になり、子供も
産んでしまう。

 

そこへトミーが終戦により帰ってくるが、彼女とゲイブの子供を見て当然
ショックを受ける。彼女としては気持ちが離れた事を手紙などではっきり
伝えた訳では無かったが、彼からの手紙に全く返事をしなくなった事で
その気持ちを多少なりとも分かって貰おうとしていたらしい。
何だかいかにもありそうな事である。

 

そんな中、彼女が殺される事件が起こる。彼女は結構魅力的に描かれて
いるのでとっても可哀想(涙)…。
それはともかく、この事件が起こるまで結構長い。時間的には後半に入って
からだが、この事件がこの作品の中心になる事件なので、この種の作品と
しては結構珍しいパターンだと思う。

 

しかしこの事件が起こるまでに細かい事件が幾つか起こっており、これらは
全て彼女の殺人事件と絡んでいる。

 

刑事ものでミステリーなので、『意外な人が真犯人』、『犯人のように
思える人は実は違う』、『細かく伏線を貼って後で回収』といった定石は
踏まえているが、その踏まえ方が上手くて巧くて…。

 

しかも、それぞれのキャラクターの行動に説得力がある。戦争は終わっても
戦争で負った傷はなかなか癒えないのだ。だが、全てを戦争のせいにする
のはどうだろう…いくら何でも、ここから先は個人の自分勝手な行為に
戦争を言い訳に利用しているだけではないか…その線引きは?…どこからが
ダメ?…そんな事も考えさせます。

 

とはいえこの回は最後は若干は救いのあるラストになっています。そうで
ないと悲しすぎます…。

 

今回、ネタバレしてもいいからこの回を細かく解説してゆこうかと思ったの
ですが、プロット、脚本ともあまりに良く出来過ぎていて、私が書けば
書くほど逆に作品を汚してしまいそうな気もしてきましたので、もう止めに
します。

 

この回久々に見返してまた感動を新たにしてしまった…。う〜ん、『刑事
フォイル』、素晴らしすぎます!!。

 

また来週も見たくなってしまいました…。

なお登場車両は英国のクラシックカーの他米軍のCCKW353トラック、ウイ
リスMB、ダッジWC-62など。

 

この回や以前の回を見逃していらっしゃる方は、是非DVDを購入するか借り
るかして見て下さい!!

 

(続く)

 

JUGEMテーマ:海外ドラマ





海外TVドラマ 「刑事フォイル」(3)

先日、久々に近場のレンタルDVD屋に行って色々見ていたら、「刑事フォ
イル」も、レンタル品として入っていた。これで、見逃した回、録画に失敗
した回も割と楽に借りて見る事が出来るようになった。(もちろん、レンタル
ではなく購入しておくのが一番良いと言える。)

 

…という訳で、久々にTVドラマ「刑事フォイル」の、ある回について書か
せて頂きたい。

 

今回は前回より若干戻ってシーズン2の、通算6話目「エースパイロット」に
ついて(ネタバレあり)。

 

この回はタイトル通り、フォイルの息子の英空軍での活躍が事件に関係する
ため、推理、サスペンスと英空軍航空機(スピットファイア)が絡むという、
TVドラマとしては非常に珍しい作品となっている。

 

この回も複数の犯罪がほぼ同時に進行し、それらが一見別々の事件のように
見えるが複雑に絡み合っており、脚本が非常に上手くできているのが分かる。
また、この回の事件とフォイルの息子の動向はその後の回にも影響を与えて
いる。

 

また、この回では、フォイルはこの回の非常に重要な事件の容疑者を最後に
追い詰めるが、逮捕しないまま終わる、という大変に特殊な終わり方をする。

 

その容疑者はフォイルの息子の同僚で親友のエースパイロット・レックスで、
亡くなったのは彼の婚約者であるが、彼は婚約者が彼ともめている最中に
ちょっとした拍子にバランスを崩して階段を転げ落ちて死亡した、という
のだ。
しかしそうだとしても死体遺棄、捜査妨害等の容疑は残る。だがフォイルは
逮捕しなかった。

 

その理由にはその際に彼に出撃命令が下った事もあるが、彼が婚約者と喧嘩を
した原因に戸惑った、という事もあるだろう。

 

彼が婚約者と喧嘩になった原因は、彼は実は同性愛者で、フォイルの息子を
一方的に秘かに想っていたのだが、それが婚約者に知られてしまった事だと
言うのだ。

 

これがこの回の最大のポイントであろう。
当時のイギリスでは同性愛は全く理解されていなかった。というか、実際に
肉体関係を持ったりしたら犯罪…それも戦後の結構な時期までそうだった…
という事は、近年日本でも公開されて話題になった「イミテーション・
ゲーム」などでも描かれて知られるようになっている。

 

同性愛と言ってもレックスの場合、フォイルの息子に対して全く一方的な
片想いをしているだけなので犯罪にはならないであろうが、それが知られた
だけで空軍を追われ、親友であったフォイルの息子とも絶縁されるであろう。
なのでレックスにとってはこれは絶対的な秘密であった訳だ。

 

フォイルはレックスが出撃してゆくのを黙って見ているしかなかった。
しかし、彼はその出撃から帰る事は無かった。
その後、フォイルの息子がフォイルにレックスの最後の空戦の様子を語るが、
そこでは彼がまるで死を望んでいたかのような戦いぶりだった事が語られる
のだ。

 

戦争もの、それも空軍や航空機が絡んだフィクション作品で、同性愛が内容に
絡んでいるものは極めて珍しいであろう(前述の「イミテーション・ゲーム」
は実話が同性愛に関係しているのでまた別だ。)。

 

最近は日本でもLGBTという言葉が広く知られ、一部の地方自治体で同性
カップルの結婚が認められるようにもなってきたが、まだまだ差別され、
偏見の目で見られる事は多いような気もしている。

 

そういう自分も、25年以上前の学生の頃の事だが、友人の男性に少々女性っ
ぽい感じの人間がおり、「おカマXX」などと仇名をつけてからかっていた
事があった。まあ彼が別に同性愛者ではない事が分かっていたからだったの
だが、考えてみると「女性っぽい男性(今の俗語で言う『おネエ』)」=
「同性愛者」というのもしょうもない偏見であった訳だ。
(ちなみに彼はその10数年後くらいに女性と結婚されてお子さんも授かった
そうな。)

 

こういう事はこのブログで扱うには少々難しい事であるが、知らず知らず
差別する側に回っている事のないよう気を付けたいと思うのである。

 

…と、少々脱線してしまったが、このように「刑事フォイル」は、現在にも
通じる社会的な問題についても想起させる、非常に優秀な作品なのである。

 

(おまけ:映画「イミテーション・ゲーム」も、私が近年見た戦争関係の
映画の中で最も面白く、感動的だったと言えるほどのものだったのでそのうち
書いてみたいと思っている。)

 

(続く)

 

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海外TVドラマ 「刑事フォイル」(2)

さて刑事フォイルの(2)なのだが、いきなり第3シーズンの#9について書かせて
頂きたい(ややネタバレあり)。

 

なんでいきなり第3シーズンに飛んだかというと、以前AXNミステリーで放映
されていた頃、HDDがイッパイイッパイの上、他に録画したいものも結構
放映されていたので、殆ど録画してはすぐ消す、という事をやっていたので
ある。なのでこれから紹介する回はその中で残った貴重な回だ。

 

なお、第3シーズンの#9といっても第3シーズンで9話もあった訳ではなく、
通しの話数で、第1シーズン、第2シーズンでそれぞれ4話ずつある。
なので第3シーズンとしては最初の回である。

 

このドラマ、日本語タイトルは「刑事フォイル」であるが、原題は
「Foyle's War」、直訳すると「フォイルの戦争」なのである。
刑事かどうかより、「フォイル」という人間の戦争体験、個人の戦い、が
主題なのだ。

 

フォイルは第1シーズンの初回の冒頭で、上司であるサマーズ警視監に海軍
諜報部への転属を願い出ている。戦争が始まったので、警察業務よりも
直接、敵と戦える役職を希望したのだ。結局断られるが、フォイルはずっと
この思いを持ち続けてゆくのだが、これが第9話の伏線にもなっている。

 

第1話でのキャラクターの内面が、数年も経って作られた第9話に生かされて
いる。この辺の一貫性も良い。

 

フォイルが移籍したがった英国軍部関係であるが、内部は単純でなく、
この回でピックアップされる組織はSOE(特殊作戦執行部)であるが、
MI6(英国秘密諜報部)から睨まれており、そのMI6のスパイに潜入されて
しまっている。ナチスドイツに勝利するため、という大義の元、味方同士でも
戦っている状態になっているのだ。

 

この回はこういう背景の上、フォイルの部下であるサマンサとミルナーの
行動や思いも複雑に絡んでくる。また、この回はその後の回でのフォイルの
辿る行動 -結局、警察を辞めて諜報部に入る- に、大きく関係してくる
重要な回である。

 

なので今回も、いや、他の回に比べても特に非常に地味な回であるとも言える。
せいぜい、少し変わった所で、フォイルがSOEの訓練所に入る際、止まって
いるハンバーFWDトラックが少し見えるくらい。

 

複雑で、きちんと見る、内容を読むのが難しい、とも言える回であるが、とに
かくこの回は非常に重要な回で、見逃せない回なのだ。

 

(続く)

 

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