前々回の「浪漫工房の活動」の連載の予告では新製品のT34/100改造パーツ
セットと遠心脱泡機の事について書く、というような事を書いていたので
今回こそ、その通りの事を書かせて頂きます。
ただ、結構書き辛いです。それは単純に言って、これによる遠心脱泡があま
り上手くいかなかったからです。しかも大体、それは予想されていた事
です。
遠心脱泡の原理は単純で、型とそれに注型された樹脂に遠心力をかける事に
よって、通常で注型した時には出来やすい気泡跡を潰して出来なくして
しまう事です。で、原理自体は単純でも、そもそも注型物の形状がさまざま
である事、遠心力を発生させるモーターの出力等がさまざまである為に
「これなら完璧に脱泡出来る」という物を作る事が難しいのです。
今までも記述した事があるかもしれないので繰り返しになるかもしれない
ですが、今回の反省の為、再度、レジンキャスト樹脂による注型と、その際
に発生し易い気泡跡というものについて記述したいと思います。
まず、樹脂による注型物に気泡跡(による欠け)が出来る原因は大きく2つ
あります。
1つ目は、シリコン型に角が多い為、そこに樹脂を流す際に樹脂が行き渡ら
なくて出来てしまうもの。
2つ目は、樹脂に湿気が混じってしまい、A液とB液の混合時の化学反応に
より気泡が発生(つまり発泡)して出来てしまうもの。
1つ目の原因を防ぐには注型物を、ランナーの部分も含めて角が無くなる
ようにすれば防げる、という事になりますが、そもそも製造しようとする
ものが特にスケールものの場合、ディティール再現が命のようなものなの
で、非常に難しい、という事になります。しかし、極力注型スピードを
遅くする、という手も併用できますので、通常注型の場合は型のディティ
ールの出っ張りを実際よりやや低めにしたり、サフェーサーを塗ってやや
なだらか気味にするようにしてます。
ただ、注型があまりゆっくりだと注型時に途中で固まってしまう事になっ
てしまうので「ゆっくり注型」の方法は限界がある事になります。
(タルクの粉末を型に薄くふりかけておく、という方法は併用済み前提で)
なお、私は以前は2分硬化型を使っていたのでゆっくり流そうとして型の
途中で固まったり、注型を急ぎ過ぎてA液B液の攪拌が不十分で硬化不良に
なったりという不具合が起こり易かったですが、今回は3分硬化型を使って
みたので、かなりゆっくり注型が出来、気泡跡が殆ど(少なくとも表面
には)残らないで通常注型で出来るようになりました。
逆に言えば遠心脱泡機が無くてもそれなりに気泡跡の発生防止が出来た事
になり、時間をかけてサーキュレータを改造して遠心脱泡機にする必要も
無かったか、的な事になってしまったのでした。
とはいえ、2つ目の、樹脂に湿気が混入しての発泡の防止は、通常注型では
出来ないので、遠心脱泡機なりなんなりで抑える必要があります(吸湿剤
を添加しての発泡防止に限界がある事はかなり以前に述べました。)。
以前はシリコン型自体を袋に入れて手でブン回す、というような事もやった
事がありますが、それだと体力的に大変なのでやはり機械的に、と考える
訳です。
しかし、遠心脱泡機のまず不安は、成型品を硬化後に取り出すためにシリ
コン型を2つ以上に分割できるようなものにする必要がある訳ですが、その
為に回転させている際に遠心力によって型同士の隙間が余計に空いて
しまい、成型品が型ごと歪みやすいという事と樹脂がはみ出して流れ
やすい、という事ですね。
はみ出しに関しては樹脂がはみ出ると思われる部分をシリコン型より一回り
大きい円筒形のもので覆って、そこにはみ出た樹脂が付くようにすれば
何とか防げます。しかし、回転による型の歪み、特に分割部分の分け目の所
に歪みが出易い、といった欠点は、回転速度を落とす事でしか防げません。
で、回転速度を落とすと結局、通常注型とあまり変わらないような事にな
ってしまう、という事ですね。
…てな訳で、とても暑い季節になってきましたし、サーキュレーター改造の
遠心脱泡機は余計な部品を外して正規の羽根とカバーをつけて写真のように
通常のサーキュレーターとして使う事になりました^^;。
(続く)